九州支部:春の行事「~失われた『豊(とよ)の国』を再発見!~」 のご報告

    2026年度 九州支部春の行事 ~失われた『豊(とよ)の国』を再発見!~

    本年の九州支部春の行事は、「失われた『豊の国』を再発見!」をテーマとして、2026年5月23日~24日に、大分県北部の中津・宇佐・耶馬渓および国東半島を巡る1泊2日の行程で、総勢15名で開催しました。
    本地域はかつて「豊(とよ)の国」といわれ、神仏習合を始めとする日本の精神的な基盤が形成された地と言われており、古代から近代に至る日本の文化の源流を辿り、現代における我々自身の価値観や行動原理を見つめ直す「知的冒険」として位置づけて企画したものです。点在する歴史資源を単独で理解するのではなく、それらを有機的に結びつけることで、日本人の根底にある思考様式を再認識することを目的といたしました。

    【1日目】
    初日は小倉駅に集合した後、レンタカーに分乗して移動し、道の駅「豊前おこしかけ」(福岡県豊前市)にて昼食をいただきました。当地は神功皇后の伝承を有する場所であり、行事の導入としてふさわしい歴史的背景を感じることができました。その後、中津駅での参加者合流を経て宇佐方面へ移動しました。

    まず訪問した双葉の里では、当地出身の昭和の大横綱「双葉山」の足跡を辿り、その生き方から「不屈の精神」という日本人の特質について改めて考える機会となりました。双葉の里から、宇佐市内ののどかな田園風景を進みます。この地にはかつて海軍航空隊基地があり、終戦間際には多くの若い方が特攻隊として旅だったといわれています。かつての滑走路が田んぼの真ん中を通っており、道路の周りには掩体壕(戦闘機の格納庫)も現存し、トラクターの格納庫として活躍しています。続いて訪れた宇佐神宮では、全国四万社と言われる八幡様の総本宮としての歴史とともに、神仏習合という異なる価値観を調和させる日本固有の文化を体感いたしました。珍しい参拝作法である「二礼四拍手一礼」(この作法は、宇佐神宮のほかには、出雲大社(島根県)、彌彦神社(新潟県)の3社だけです)も含め、他地域とは異なる独自性を実感する場となりました。参拝途中、参加者の藤川さん(1967)のご提案により、宇佐神宮のメイン参拝ルートから少し離れた大尾神社も訪れました。ここは、かつて和気清麻呂が八幡大神からの御神託を受け、道鏡の野望を打ち砕いた場所として知られています。途中の険しい山道は宇佐神宮の参拝とはかなり異なる物でしたが、神社にたどり着いた瞬間の厳かな雰囲気が印象的でした。


    夕刻には中津市内にて懇親会を開催いたしました。名物「鱧(はも)」を始めとする地元の海の幸・山の幸を味わいながら、「豊の国」という視点で歴史・文化・個人の生き方など多岐にわたる議論が自然発生的に行われ、参加者相互の理解と親睦が大きく深まる有意義な時間となりました。懇親会会場の店先では、お店所有のオート三輪(ダイハツ/ミゼット)を発見。ここは乗り物好きの機械屋の集まりらしく、店の方に現在の使われ方など詳細なヒアリングが始まりました。また、この懇親会では、千々木さん(1979)より、この地域の歴史に関する深い造詣がご披露されました。


    【2日目】
    2日目は参加者の関心に応じて2つのコースに分かれて実施しました。

    中津・耶馬渓コースでは、福沢諭吉旧居および中津城を訪れ、近代日本における思想的転換点と「独立自尊」の理念の背景について理解を深めました。その後、青の洞門および一目八景を巡り、自然と人間の営みが長い年月をかけて形成した景観を体感するとともに、特に青の洞門は、菊池寛の小説「恩讐の彼方に」で描か

    れたように、禅海和尚が30年以上を費やして掘削したものであり、不屈の精神の象徴として初日の学びと重ねて理解することができたと同時に、禅海和尚が托鉢で資金を集め、一緒に掘削してくれる仲間を雇ったり、完成後は通行料を徴収したり(日本初の有料道路)と、意外にビジネスマンだったことを知り、新しい発見を得ました。と同時に、現在日本で課題とされる「レジリエントな社会」についても考えさせられるものでした。

    一方、国東半島コースでは、熊野磨崖仏や両子寺を訪問し、神仏習合文化が地域にどのように根付いているかを実感いたしました。加えて、昭和の町では高度経済成長期の日本の活気を再現した街並みを散策し、現代との対比の中で日本社会の変遷を考える機会となりました。

    青の洞門 禅海和尚像前にて(中津・耶馬渓コース) /   熊野摩崖仏にて(国東半島コース)

    【まとめ】
    今回の行事は、九州支部事務局長を拝命した私がこの地域出身だから、という軽い気持ちから始まった企画でしたが、改めて我が故郷とその歴史について学び、ひいては日本人について考えることにもつながる良い機会となりました。
    本行事を通じて、「和の源流(宇佐)」「不屈の魂(双葉)」「自由の胎動(中津)」という3つの視点が有機的に結びつき、日本人の価値観がどのように形成されてきたのかを立体的に理解することができました。それぞれの訪問地が単なる観光地としてではなく、思想や文化の蓄積された場として再認識された点に本行事の意義があったと考えております。

    また、懇親会を含めた参加者同士の交流を通じて、多様な世代・バックグラウンドを持つ会員同士が率直に意見交換を行うことができ、今後の九州支部活動においても大変有意義な基盤となる機会となりました。

    九州支部では今後も、会員相互の交流の深化とともに、知的好奇心を刺激する魅力ある行事を企画してまいります。他支部からの参加も歓迎しておりますので、今後ともご支援・ご参加を賜りますようお願い申し上げます。