住友金属工業(株) 関西製造所における熱間鍛造技術について
 −特に、6500Tプレスのクランク軸鍛造を中心として−
住友金属総研 田村 憲司
 住友金属関西製作所では、尼崎でボイラや各種鋼管を、大阪で鉄道の台車車輪、鍛造品、トラック、自動車用のクランク軸を製造している。自動車用のクランク軸は10〜30kg程度の物であるが、これを熱間鍛造する際には6500トン高速鍛造プレスを使用している。
 乗用車のトレンドとしてハイパワー化、軽量化、CO2削減が上げられ、クランク軸としては軽量、コンパクト、高強度、高剛性、高バランスのものが要求され、さらにコストダウンに伴う省プロセスが重要である。さらに鋳物品と比較して、被削性も重要な課題であった。
 乗用車用クランク軸の軽量・コンパクト化するために、CAEによる最適化とV6クランク軸の鍛鋼化を実施し、コストダウンのために倍速全自動化と非調質鋼を検討した。
 CAEを実施するにあたり、バランスウェイトの削減、リブの追加により、重量を5%削減、剛性を従来並とした。また、V6クランク軸特有の複雑な軸に対しねじり加工後の形状をCAEで予測し、30%の軽量化を実現した。
 製造ラインを直結させ、鍛造設備を従来の7から3に省きにより80mのラインを45mとした。
 鍛造を高速化(450P/H)を実現するために、鍛造時の金型潤滑剤や膜切れを防止する強分散黒煙を均一分散させ、バインダー成分(有機)を4%から8%にする最適化を実施した。
 鍛造鋼の材質についても検討し、非調質化成分設計技術を確立した。鋼のフェライト率を上げて、高強度を確保し、疲労強度15%以上UPを実現した。
 また、にS、Pb、Caを最適添加し、快削性を確保した。
 鍛造ラインの全体システムを統括的データ情報による集中管理とした。
 以上の結果から、90年から97年にかけて、V6クランク軸の本数は1.3倍(210万本UP、シェア22%から28%に)、V6エンジンの軽量化(20%)が出来、17から33型へのV6エンジンの増加とともに鍛鋼クランク軸の乗用車使用率も29%から73%に増えてきた。
 今後の市場規模としては1兆7800億/年、全体で1180万本と非常に大きく、今回の開発で省エネ、CO2削減(2万トンC/年)が実現できた。

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