カオスの話
京都大学 精密 中井 幹雄
日本機械学会論文集にみるカオスの研究紹介
  世界で最初にカオスのアトラクタをアナログ計算機で計算したのは京大の上田名誉教授(1961)。アトラクタの形状はギザギザのある割れた卵のような図形であり、この現象を「不規則遷移現象」と呼んだ。機械学会論文集では、佐藤らがバックラッシュをモデル化した「歯車の動的異常現象について」(1979)が最初であり、このときも「不規則遷移現象」と呼んでいた。小寺が1986に「衝突振動系におけるカオス挙動」と言う題名で初めて「カオス」が使用された。1995年をピークに最近ではカオスに関する論文は減っている。この原因は、カオスだけでは論文にならなくなったこと。カオスに関する海外雑誌が増え、そちらに投稿する研究者が増えたことが考えられる。
簡単な例によるカオス現象
  強制減衰振子を用いて以下の説明がありました。
ポアンカレマップ(一周期毎の状態変数の値を集めた図)
不動点(周期を経ても移動しない状態変数値)
安定多様体(不動点へ向かう状態変数の集合)
不安定多様体(不動点から離れてゆく状態変数の集合)
メルニコフ関数(安定多様体と不安定多様体の距離を表す関数)
トランジェントなカオス(初期状態でカオスであるが、ある周期後周期振動となる)
安定なカオス(常にカオス状態)
実験によって発生したカオス現象
  衝突を伴う方餅張りの振動現象を用いて具体的な説明がありました。耳で聞いていると、カオス発生時に(慣れていれば)すぐ分かるそうです。
カオスの応用
  タイヤの溝、家電機器、防振材などに利用されているが、カオスを実用に役立たせるのは難しい問題と実感。ただし、Tien-Yien Lie氏によれば「カオスの応用可能性が見えてきたら日本人はカオスの研究に猛烈な関心を示すだろう」とのこと。

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