HDD用ディスクの加工
S58、神戸製鋼 生産技術研究所加工技術研究室 原 宣宏
 全世界でのハードディスクの総売上は2兆7千億円(1999)、出荷台数1〜2億台である。ハードディスクには、アルミディスクとガラスディスクがあり、アルミディスクのシェア50%を神戸製鋼で生産している。(ガラスディスクは、日本板硝子と協業)
 1956年、IBMにて5MB(0.002MBPI^2)が開発されて以来、年率60%、近年では100%近い記録密度の増加により、2001年発売のディスクでは110GB(2.5inch、100GBPI^2)が製造されている。
 HDDの構成は、ディスク、キャリッジ、スピンドルモータ、ヘッドがあり、ヘッドの大きさは1mm以下ディスクとヘッド間の距離は0.05μm程度であり、これは煙草の煙粒子よりも小さい。
 ディスクの構成は、アルミディスク基盤の上にNiPメッキ、下地層、磁性層、保護潤滑面があり、後者の3層はスパッタ層である。
 ディスクの材質としては、強度が高く、晶出物が小さく、メッキ製が良好であるものが好ましい。アルミディスクの製造法は、圧延によるアルミ板を打ち抜き、プレス焼鈍、エッジ切削、両面研磨、NIPメッキ、両面研磨(ポリシング)、テクスチャリング(ヘッドとの付着を防ぐため、数ナノの傷を付ける)の工程による。
 ガラスディスクの製造法は、板ガラスの打ち抜き、または熔解からの成型を経て、エッジ研磨、両面ラッピング、ポリシング、テクスチャリングの工程による。ディスクの両面研磨は遊星運動による均一な加工であり、アルミの場合、グラインドとしてPVA砥石、ポリンシングでは化学反応によるパッドである。一方、ガラスの場合、グラインドは鋳鉄、ポリンシングはパッドである。
 PVA砥石はSiCの砥石をPVA樹脂で保持し、樹脂含浸により耐水性を持つ。この砥石はスポンジ上の多孔質(70〜80%)であり、スクラッチが生じにくく、目詰まりがないことが特徴である。
 ディスクの寸法は、記録密度の向上により、小径化しており、14inchから3.5inch、2.5inch、1inch化している。2.5inch以下は板ガラスの基盤である。
 この理由は、記録密度の向上とトラック幅の減少、回転速度の上昇により、ディスク振動による記録エラー(TMR問題)が起こるためで、1万rpm以上では高剛性のガラスが使用される。
 今後、ディスクはアルミ合金から、ガラス、ガラス状カーボン、セラミック、プラスチックなどの材質の可能性もあるが、現状では、経済性やヘッドの改善により、アルミが主流である。2.5inchディスクは、耐衝撃性が要求されるノートパソコンに使用されるため、ガラス化が進んでいる。
 将来的には、アルミディスクのままで、136GBPI^2、厚さ0.8mm→1.27mm(振動対策)、直径3.5inch→3.0inchになると考えている。
 今後の展望として、パソコンに用いられていたHDDは、デジタル家電の録画のメディアとして使用される。このメリットとして、長時間録画(30GBで15時間)、放送中の特殊再生機能が可能になる。
 また、ビデオオンデマンドを可能にするには、より低価格、大容量化が進む必要がある。

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