21世紀の製品設計・生産システムについての一考察 |
京都大学 精密 吉村 允孝
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生産方式は産業の発達とともに大きく変化してきた。19世紀末にテーラーによる管理法が生まれ、自動車産業に導入されて、フォーディズムとして少品種大量生産方式が確立された。さらなる豊かさの要求に応じて多品種少量生産のジャストインタイム生産(トヨタ方式)や生産に不要なものを取り除いたリーン生産方式へと変遷した。90年代になると、パソコンなどの注文生産に見られるCALSパラダイム(情報をデジタル化した迅速な生産方式)に基づく生産方式に移行しつつある。さらに、メーカーと顧客が協力して顧客の満足度の高い製品を生産する方式(コラボレーション)が進みつつある。 コラボレーションによる生産の最適化はコンカレントエンジニアリングの考えを基本にしている。コンカレントエンジニアリングとは、従来、階層化されていた意志決定を一旦同一のレベルに置き、異なる知識と情報を持つ異分野の者(例えば、研究開発・設計・製造・販売)がデータベースや設計を共有化し、設計解を決定するものである。これにより、個々の分野での最適化の結合による従来の設計とは異なり、全体最適解を得ることが可能になる。 さらに、現存する集団の持つ知識範囲を超えてブレークスルーとなる最適解を得るためには、異なる知識、経験、文化、創造力をもつ人々(異なる部門・企業・顧客)とのコラボレーションが必要であり、ネットワークの進歩によってそれが可能となってきた。 このような異なる部門の複数の意志決定により、最適解を得る可能性が高まるが、一方で、意志決定者間で対立する要求が発生し、逆に好ましくない解に陥る場合もある。これを回避するために、コンピュータによる意志決定支援が開発されている。これには、各設計パラメータに対する満足度関数を求め、それらの交点での満足度を改善するために各意志決定者が設定する目標値や妥協値を変更するといった手順で、意志決定の対立を解決するなどの方法がある。 |