ドライカットシステム
三菱重工業(株)工作機械事業部 技術部 中村 容造
 歯切加工(ホブ切り)時に使用する切削油剤は、油煙の発生、火災の原因、廃油焼却処理によるダイオキシン発生の原因になる。作業環境、地球環境の改善の為、油剤のコストは、処理費用を含めて全体の15-30%(ドイツ)になり、切削油剤を使用しないドライカットの要求が高まっている。そこで、ドライカットができる工具、 加工機を開発した。
その開発ポイントは、工具と加工機の開発にあり、それぞれについて以下に列挙する。

工具
従来のTiNコーティング工具は、大気中800℃に放置すると表面から4−5μmに酸素が進入し、母材近くまで酸化チタンになるため、脆くなる傾向がある。一方、TiNハイス製TiALNコーティング工具は、表面から0.5μmまでしか酸素が進入せず、酸化した場合でもアルミ酸化物が形成されるので、表面は強靱である。そのため、切削油を使用したTiNと比較して、切削油を使用せずに切削速度2倍、寿命5倍にできる。
加工機
ドライカットすると、高温の切り屑のために加工機が熱変形する。これを防ぐために、切り屑の真下に穴を開け、ベルトコンベアで切り屑を機外へ排出できるようにした。また、加工機の剛性をFEMで解析し、ヘッドの断面積を縦方向に長く、またコラムの高さを半分にした。さらに減速ギアの大径化(φ500)による個数削減、ヘリカルギアの採用などにより、剛性を向上させた。

 これらの開発により、以下の項目が達成できた

切削油剤を使用しないため、クリーンで安全
油用装置が無い、加工速度が2倍なので、従来の二台分を一台にでき、省スペース化
従来から30%の省エネルギ化(特許30件、通産大臣賞受賞)

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